体にいくつものよい影響があるオリーブオイルですが、本物であるのかどうかという疑いの声を聞きます。どうしてそのような疑問が出ているのか、本物を見分けるにはどうすべきかについて紹介してきます。
オリーブオイルの定義
はじめに、オリーブオイルはIOC(インターナショナルオリーブカウンシル)という国際機関による定義や規格をクリアしていないとオリーブオイルと呼ぶことは出来ません。
定義としては「オリーヴ樹(Olea europaeaL.) の果実のみから採取されたもので、溶剤の使用、再エステル化等の処理を一切行わずに採取されたオイル。他のいかなる種類のオイルも混在してはならない。」とされています。その中で規格によりいくつかの種類が分けられているのです。
IOCではオリーブオイルを9段階に分けており、その基準は主に酸度によって区分されます。オリーブオイルの場合、酸度とはオイル中に遊離脂肪酸がどのぐらい含まれているかを示す数値のことを指します。酸度が高いほどオイルの中に中性脂肪が分解されてできる遊離脂肪酸が多く含まれて安定に欠き、劣化しやすいことを示します。つまり、のちほど解説しますが、オリーブオイルの中で際状況であるエキストラバージンオリーブオイルは、酸度が最も低く安定しているオイルとなります。
1:エキストラバージンオイル | 酸度0.80%以下 |
2:バージンオイル | 酸度2.0%以下 |
3:オーディナリーバージンオイル | 酸度3.3%以下 |
4:ラバンテ | 酸度3.3%を超えるもの 酸度3.3%以下での香り、味に欠点があり食用に不適なもの |
5:リアファイン(精製)オリーブオイル | 酸度0.30%以下 バージンオリーブオイルで4を脂肪酸組織を変えない範囲で精製したもの |
6:ピュアオリーブオイル | 酸度1.0%以下 |
7:クルードオリーブポマースオイル | オリーブの搾りかすを溶剤で抽出したもの、工業用 |
8:精製オリーブポマースオイル | 食用として7を脂肪酸組織を変えない範囲で精製したもの 酸度0.30%以下 |
9:オリーブポマースオイル | 8とバージンオリーブオイルをブレンドしたもの 酸度1.0%以下 |
日本ではこの種類のうち主に1:エキストラバージンオリーブオイル、2:バージンオリーブオイル、6:ピュアオイルの3種類が販売されています。
オリーブの木1本からは約3~10ℓのオリーブオイルが作られ、その内の一部しかエキストラバージンオリーブオイルとして販売されません。とても希少価値があり価格も高めのものが一般的ですが、日本にはエキストラバージンオリーブオイルと記載されている安価なオリーブオイルがいくつも販売されているのです。日本は特に他国に比べると偽物のオリーブオイルが出回っていると言われています。これは日本がIOCに加入していないため、基準が国際基準ではなくJAS規格(日本農林規格)が定めたもの日本オリジナルの基準にそって作られていることが大きく影響しています。
世界と日本の基準の違い
IOCによる国際規格はエキストラバージンオリーブオイル100gに含まれる酸度が“0.8%以下”であることが決められていますが、日本では酸度ではなく酸価基準が設定されており、オリーブ油と精製オリーブ油に分類され、オリーブ油は酸価2.0mg以下のものと定められています。酸価×0.503すると酸度が計算できます。例えば、日本基準でエキストラバージンオリーブオイルとされていて酸化2.0mgとなる場合、2×0.503=1.006となり、酸度1.006となり、国際基準で言えばバージンオリーブオリーブオイルとなります。
日本のエキストラバージンオリーブオイルが偽物と言われるわけ
JAS法よれば、日本ではオリーブオイルと精製オリーブオイルの2区分しかありません(正確にはオリーブ油と精製オリーブ油)。その2種の差は先ほど説明した通り、酸化と水分及びきょう雑物の混入量によってしか区分されていません。つまり、エキストラバージンオリーブオイルについて定義するものはなく、オリーブから抽出しているオイルで、オリーブ油か精製オリーブ油かの基準を満たしていれば、エキストラバージンとも名称して販売が可能になります。
そのため、販売者によってエキストラバージンオリーブオイルという名称と使用するかどうかについては販売者の判断で決定できます。ゆえに、国際基準と照らし合わせた際に、日本では本当はバージンオリーブオイルなのにエキストラバージンオリーブオイルとして売られている、偽物だと言われる所以です。
また、本来オリーブオイルとはオリーブの果実から採られた植物油です。1度油を搾り採った残りカスに溶剤や熱を加えて再利用しオリーブオイルを精製して作っていることがあります。この場合、精製しているため本物のオリーブオイルではなくなり販売することが出来ないため、1割程度本物のオリーブオイルをブレンドして日本ではピュアオイルとして販売しています。しかし、これを最上級のエキストラバージンオリーブオイルとして販売している可能性があり、日本独自の緩い基準に加えて日本のエキストラオリーブオイルが本物ではないと言われる理由にもなっています。
日本で販売している99%は外国産のものであり、その5~9割は本物のオリーブオイルとは言えないものが販売されていると言われています。近年では、ヨーロッパの干ばつによりオリーブが採れず、ヨーロッパでもひまわり油などにクロロフィルなどを加えオリーブオイルに似せた偽物の油を販売している事例が増えており、問題となっています。環境の影響による産地のオリーブ不作も偽物が出回る理由の1つとして大きく影響しているでしょう。実は、日本で販売されているオリーブオイルにもひまわり油など他の油が混ざって作られているものがあると言われています。最初のIOCの定義によればこの場合オリーブオイルと呼ぶことは出来ず販売することも出来ません。しかし、実際のところ本当にそのようなオリーブオイルが販売しているのか、販売している場合どのくらいの割合が出回っているのかは分かっていないのが現状です。
理由としては、特に日本で販売しているオリーブオイルには基本的な情報として原産国が記載されていますが、最終的にボトル詰めをした国の名前が表記されており、どの国で栽培したオリーブを使ってどこで作られているのかなどはほとんど表記されていないことの方が多いです。イタリア産と記載されていても、違う国で作られたオリーブオイルをイタリアに輸入し、イタリアでボトリングすればその商品はイタリア産となってしまいます。そのため、精製していないか、他の油がブレンドされているかなども含め偽物である判断材料となる情報は商品表記だけでは確認出来ず、ボトリングされた状態では本物か偽物かの判断をすることが難しいのです。
国際基準が全てではない
日本ではJAS法により、酸度だけでなく、色やよう素価など様々な基準が設定されており、食用として安全としてが担保されているということは間違いがありません。そのため、例え国際基準から逸脱する基準であったとしても日本の厳しい基準をクリアしたオイルであり、食用における安全性は問題ありません。
特に国際基準でオリーブオイルは9つの区分がされていますが、ここに品種や産地などの基準はありません。オリーブオイル好きの方であれば、どちらかというと産地や品種などでオイルを選ぶことが多いでしょう。そのような背景からこの国際基準が全てではなく、あくまでオイルの基準を定めたものに過ぎないということです。
輸入されているエキストラバージンオリーブオイルと、日本メーカーが充填販売しているエキストラバージンオリーブオイルでは価格差も2倍からものによっては10倍以上の価格差があることがあります。その価格差はエキストラかどうか?ということだけでなく品種や産地、製造方法、受けている認証など様々な要素によって変わってきます。つまり、日本のエキストラバージンオリーブオイルは偽物だから安く、輸入物は本物だから高いということでもありません。
エキストラバージンオリーブオイルだけでなくオリーブオイルは品種や産地、調理方法で好みが分かれる代表的なオイルと言って良いでしょう。そのため高い輸入物が良いということではなく、むしろ自分の好みにあったオイルを探すというほうが楽しみも広がるのではないでしょうか?
オリーブオイルを選ぶ時に気を付けること
ここまで世界の基準と日本の基準を解説しましたが、やはり本物のエキストラバージンオリーブオイルを食べたいという方もいるでしょう。そのような場合どのようなことに気を付けて本物のオリーブオイルを見分けたらよいのでしょうか。それにはいくつか注目するポイントがあります。
- 入っている容器に遮光性がある
- 酸度が0.8以下である
- 価格が高めである
- 収穫時期や原産国・地域・オリーブの品種などの記載がある
- オーガニック認証マークがついている
- JOAマークがついている
- 品評会の受賞歴がある など
1番分かりやすいポイントは遮光性のある容器に入っているかということと価格です。オリーブオイルは強い光によっても酸化が始まるため、黒っぽいビンなどに入った遮光性の高いものに入っているものが一般的です。しかし、日本にはデザインや使い勝手を重視して遮光性のない容器に入っているものがあるため、遮光性があるかも重要で分かりやすいポイントになります。さらに、希少価値が高いエキストラオリーブオイルは価格が高めです。メーカーなどによって価格帯の幅はさまざまですが質のよいものは3,000円前後のものが多いため、価格の安いものや透明なビンなどに入っているオリーブオイルは避けた方がよいでしょう。
次に分かりやすいポイントとしては、認証マークやJOAマークがついている、収穫時期・原産国などの情報が細かく記載されているものです。JOAマークとは日本で唯一IOCに加盟している日本オリーブ協会により、IOC規格をクリアしたオリーブオイルにだけつけられているマークです。このマークがついているものは、国際規格を満たしている製品が多いです。また、先ほどもお伝えしたように日本に販売している多くの商品には原産国以外の情報がほとんど記載されていませんが、収穫時期やオリーブの品種などの記載があるものは規格をクリアしているものが多いです。また、原産国も国ではなく地域などの記載があるものの方が本物の可能性が高くなります。
酸度もエキストラバージンオリーブオイルの場合0.8以下が認定の対象となっており、数値として目にしやすいため分かりやすく的確なポイントになります。しかし、ラベルが英語表記の場合“acid”や“acidity”という表記になるため商品によっては少し分かりづらくなりますが、知っていれば判断しやすくなります。品評会やコンテストなどで受賞歴のあるものもオリーブオイルの専門家による厳しい審査を通り選ばれた質の高いオリーブオイルであるため信頼度が高く参考にしやすいです。お店によってはテイスティング出来る場合やより詳しい話を聞くことが出来るところもあるため、目に見える情報だけでなくオリーブオイルそのものの味や香り、歴史などを知ることでより安心して購入することが出来ます。本物の厳しい基準をクリアしたオリーブオイルは味・香り・栄養などが本当に違います。ぜひ本物と呼ばれる風味だけでなく体にも美味しいオリーブオイルを味わってみて下さいね。