【サプリでなぜ?】小林製薬「紅麹」の正体と危険性(リスク)

2024年3月22日の午後の小林製薬の記者会見を受けて、ここ数日話題となっている紅麹。

紅麹を使用した商品が原因(とされているが科学的根拠はまだない)となり健康被害とメーカーによる自主回収が進められています。今回の紅麹に関する騒動がどういったものかを、まとめて解説していきます。

紅麹とは?

紅麹とは麹の一種で、デンプン質食品(主に米など)に紅麹菌(Monascus属)を繁殖させたものを紅麹と呼びます。その名の通り、見た目も赤い麹で、紅麹を加えた食品も赤色をしていることが多いです。

紅麹が健康に良いとブームになったのはここ数年の話ですが、紅麹の記録は2000年以上前からあるとされており、紀元前後に書かれた薬学の書物「神農本草経(しんのうほんぞうきょう」にも紅麹は記録されています。神農は古代中国の神で、神農本草経はその神にあやかってつけられた名前と考えられていますが、書物として紅麹についての記録があるのはこの神農本草経が最古であるとされており、中国に由来のある菌と考えられています。

紅麹菌は非常にデリケートで、特定の環境でないと培養できず、雑菌などにも負けてしまうことから古来より中国、台湾、沖縄の一部でしか製造ができなかったのはそのためとされています。作り方は、蒸した米に紅麹菌を加え10日〜1ヶ月程度水を加えたり、かき混ぜたりを繰り返しながら培養を行います。

日本では沖縄の伝統料理、豆腐ように使用されており、中国台湾では紅酒、老酒などに使用されてきました。昨今の健康ブームにより日本では紅麹を使用した甘酒や酒、味噌、サプリなどにも使用されています。

【サプリでなぜ?】紅麹が注目された効果や健康成分

紅麹には悪玉コレステロールを抑える『モナコリンK』と、血圧を下げストレスを抑える『GABA』が含まれるとされています。

悪玉コレステロールとは人体に存在する脂質のひとつで、『LDLコレステロール』のことを指します。LDLは肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ役割をもっており、適量であれば問題ないですが、増え過ぎたり過剰になったりすると、血管壁にたまってしまい、心筋梗塞や脳梗塞を起こすとされています。特に心筋梗塞患者数は年々増えており、予防すべき病気の1つとして強く意識されるようなってきました。そこで、悪玉コレステロールを抑えるモナコリンKが含まれる紅麹が注目をされたのです。

モノコリンKは肝臓内でコレステロールが生成される過程で最も重要とされる酵素である律速酵素として働くHMG-CoA還元酵素に対して拮抗作用を示すことでコレステロールの生成を抑制されるとされています。世界的に売られているコレステロール合成阻害薬のスタチンと同様の働きを示すことからモナコリンKを含む紅麹は悪玉コレステロールを抑える効果があるとして人気となったのです。

また、GABA(ギャバ)が含まれていることも紅麹を人気としました。GABAは脳内に存在する抑制系の神経伝達物質としてストレスを和らげ、興奮した神経を落ち着かせる働きをもっています。GABAは天然アミノ酸の一種で、もともと体内にも存在していますがストレスにさらされたり、年齢とともに体内で生成される量が減ってしまいます。そのため、現代のストレス社会ではGABAを経口摂取することが求められ、GABA成分が含まれる紅麹が人気となったのです。コンビニとかで、GABA入りのチョコレートとか見かけたことありますよね!

このように現代人が抱えている病気のリスクやストレスなどを緩和してくれる成分をもつ紅麹はまさに今の時代に求められる存在であると言えます。そのため、数多くのサプリメントに利用されており、小林製薬のサプリメントのみならず、他のサプリメントメーカーに原料供給していたとのことなので、これだけの騒動に発展してしまったと言えます。

小林製薬から自主回収の発表

このように有用な成分をもっている紅麹ですが、2024年3月22日に、小林製薬社が製造販売している紅麹コレステヘルプを摂取した方に腎疾患等が発生したとのことで自主回収がなされることが発表されました。この報道は厚生労働省のHP上でも公開され、ニュースやラジオ、新聞などでも広く報道をされています。

2024年3月26日時点での報道内容では、小林製薬社の紅麹を含む製品を摂取した人で入院した患者数が延べ26名となり、現在も4名が入院をしているとのことです。昨年小林製薬社は18.5トンを製造し、16.1トンをすでに販売をしているとの発表をしています。

52社の問屋を通じ食品メーカーに卸されているとのことですが、問屋が52社もいるうえに、そこから提供されたメーカーなどを把握することは時間を要することから全容の把握には時間がかかるものと考えられています。特に食品などのメーカーは問屋を経由して小売店や二次卸、三次卸と展開をしています。そのような商習慣もあり全ての流通経路を確認することに時間を要しているのです。

紅麹は危険なのか?

冒頭解説した通り、モナコリンKやGABAなどの有用な成分を含んでおり、2000年以上前にから摂取されてきた菌です。そのため、紅麹そのものが危険で毒性を持っているということは現時点では明らかになっていません。

食品を製造する際に菌を使用した場合、『カビ毒』が発生する可能性があり、多くのメーカーはこのカビ毒が発生しないよう、また発生しても健康被害が出ない程度に発生を抑えるよう最大限の対策を行なっています。もちろん国もそれらカビ毒に対する基準値の設定などを行い、対策を講じています。

紅麹を生成する際に発生する可能性のあるカビ毒として『シトリニン』が広く知られています。腎細尿管上皮変性を起こすことが知られており、過去EU圏内で製造販売されたサプリメントにシトリニンが含まれ、健康被害が生じたことからEU、日本においてもサプリメントに含まれるシトリニンの基準値が設定されています。日本では2000μg/kg、EUでは100μg/kgとなっており、EUのほうが厳しい基準が設けられています。EUのほうが厳しい基準となっていますが、一概に日本が甘いとか、EUのほうが徹底しているということではなく、欧米人と日本人は体質や食文化なども異なるため、それらを加味した差になっています。

小林製薬社の製造する紅麹菌はゲノム解説の技術を用いて、そもそもシトリニンが発生しない紅麹菌を使用していたと発表されています。また自主回収となった紅麹コレステヘルプは日本ではなくEUのより厳しい基準値を設定して製造されているとも発表されています。今回健康被害において現時点ではシトリニンは確認されていません。

そのため、紅麹=危険ということではないということになり、現段階では、なにが原因だったのかは特定されていない状況です。

また、紅麹は着色料としてカニカマなど身近な食品にも使用されており、知らず知らずのうちに摂取している可能性があります。なかなか腎臓の不調というのは、分かりにくいのですが、体調に何らかの変調が生じた場合は、すぐに医師に相談することをおすすめします。

記事監修

この記事は、薬剤師すぎもんが監修いたしました。

薬剤師すぎもんの略歴

  • 2014年薬剤師免許取得
  • 2年間、IT系ベンチャー企業にて従事
  • その後現在に至るまで、薬局薬剤師として勤務。管理薬剤師経験あり。

監修者コメント

今回の小林製薬「紅麹」によると思われる健康被害については、かなり大規模なものとなっており、健康食品・サプリメントとしての被害は最大級といっても過言ではありません。が、未だ原因となっている物質がこれだ!と確認できておらず、その影響か、自主回収の判断も少し遅れてしまったような気がします。こうした状況で一番怖いのはパニックになることだと思っており、冷静に普段摂取している食品を確認していただき『紅麹』が含まれていないか。含まれていたとしても、健康被害がなければ落ち着いて、体調変化が生じているようであれば、速やかに医療機関を受診することをおすすめいたします。