全粒粉とは?全粒粉の栄養成分やメリット・デメリット

 近年、パンやパスタ、シリアルを中心に“全粒粉”と書かれている商品を見かけることが増えています。パンなど全粒粉を使ったものが茶色い見た目をしているということは知っていても、なぜ茶色いのか、栄養の違いはあるのかなど分からないことも多いかと思います。そんな全粒粉について特徴や栄養成分を中心に紹介していきます。

全粒粉とは?

 まずはじめに、全粒粉は小麦粉の1種です。一般的な小麦粉は小麦を製粉して粉状にしたものですが、製粉する際に“ブラン“や”ふすま“とも呼ばれている小麦の表皮や中心部にある胚芽の部分を取り除いて加工しています。しかし、全粒粉はその表皮や胚芽も含めて小麦すべてを製粉しており、表皮などが入ることによって全粒粉自体、茶褐色の見た目をしています。

表皮や胚芽が含まれることにより一般的な白い小麦粉に比べると小麦の香ばしい香りや味わいを感じることが出来ます。身近なもので例えると精米前の玄米と同じ状態になります。

全粒粉は粒が粗い部分が含まれているため、一般的な小麦粉に比べると触った時にざらっとした感触があり、全粒粉を使ったパンやパスタは小麦の粒のプチっとした食感を感じることが出来ます。また、お菓子作りに全粒粉を使うとザクザクとした歯ごたえを出すことが出来るため、クッキーやクラッカーのような焼き菓子やシリアルなどを作ることに向いています。反対にシフォンケーキやスポンジケーキのようなふわっとした軽いケーキやしっとりしているお菓子などに使うのは不向きとなります。

全粒粉を使ったパンも香ばしい香りを感じられ人気が高いですが、すべて全粒粉で作ってしまうともちもちとした食感はあまり出すことが出来ず、ぼそぼそとした仕上がりになってしまうため、他の小麦粉と混ぜて作られていることが多いです。全粒粉の中にも粒感を感じやすい「粗挽き」と細かく挽いたなめらかな食感の「細挽き」の製粉方法があるため、どちらを使うかによって仕上がりに違いを出すことが出来ます。

全粒粉の栄養分

 小麦をそのまま使っている全粒粉は含まれている栄養分も多く、たんぱく質や食物繊維の他に、マグネシウムや鉄分、ビタミンB1、ビタミンE、亜鉛などたくさんのミネラルが含まれています。一般的な小麦粉に比べるとミネラル全体が約3倍以上のものが多く、特にマグネシウムや食物繊維は特に多く含まれています。さらに栄養豊富で健康食としても馴染み深い玄米よりも全粒粉の栄養価は高く、玄米と比べても食物繊維やカルシウムは約3倍以上もあります。カロリーも小麦粉が349kcalに対して全粒粉は320kcalと低くいのが特徴です。

小麦粉(薄力粉)100gに対して全粒粉100gの栄養素の比率

  • ビタミンE/B1/B2 3倍
  • マグネシウム/亜鉛 10倍
  • 鉄 6倍
  • 食物繊維 4倍以上

全粒粉のメリット・デメリット

メリット

 
全粒粉には含まれる栄養分が多いことやGI値が低いことがメリットとして挙げられます。GI値とは食後の血糖値の上昇を表す数値のことで、炭水化物を含んだ食品を食べると血糖値が上がりやすくなり、血糖値が高いと肥満や糖尿病をはじめ神経障害など身体への影響が起きやすくなってしまいます。生活するうえでビタミンなどの必要なミネラルは意識をしていないと不足しがちな栄養分になってしまい、その栄養分を上手に摂取しないと食事の量が増えて血糖値が上がり、健康のために取り入れた食事がかえって逆効果になってしまうことがあります。

しかし、この全粒粉には栄養分が豊富に含まれているため摂取しやすいだけではなく、GI値が低いことから血糖値の上昇をゆるやかにしてくれることが体内への吸収もゆっくりとなり、この働きが脂肪をつきにくくしてくれると言われています。低GI食品はGI値が55以下が対象となり、全粒粉を使ったパンのGI値は50、オールブランのシリアルはさらに低く45と言われています。低GI食品としてよく紹介されているそばや玄米のGI値は実は55であり、一般的な小麦粉を使ったパンは95と他の食品と比べても全粒粉を使った食品のGI値が全体的に低いことが分かり、全粒粉は血糖値を抑えたい人にはとてもおすすめな食材です。

また、粒感を感じる全粒粉は歯ごたえがあり、自然と噛む回数が増えることにより腹持ちもよくなるため間食などを防ぎ、ダイエットにも非常に効果が期待出来る食品になります。栄養素の中でも特に豊富に含まれる食物繊維は腸内環境を整えてくれるだけでなく、善玉菌を増やす働きやコレステロール値を抑えてくれる働きもしてくれます。さらに、小麦の表皮には抗酸化作用のあるポリフェノールも豊富に含まれているため、便秘解消や肥満防止だけでなく老化防止など生活習慣病の予防にも繋がります。

デメリット


デメリットとしては全粒粉もたんぱく質から作られるグルテンが含まれているため、アレルギーのある人は注意が必要になります。食物繊維も豊富で体に良いからといって摂りすぎてしまうと、消化不良やミネラルなどの必要な栄養分が吸収されにくくなってしまうなど影響が出てしまうことがあるため、バランスよく摂取することがおすすめです。

全粒粉に含まれる食物繊維は100gあたりおよそ11gほどと言われており、1日の目安摂取量は成人男性なら21g、成人女性なら18gと全粒粉100gを摂取してもまだたりない状態です。そのため、全粒粉による過剰摂取はあまり考えいにくいですが、全粒粉に含まれる食物繊維は不溶性食物繊維で、過剰摂取により便秘を引き起こす可能性があります。

また、胚芽にはフィチン酸という貧血の予防や抗酸化作用につながる成分が入っています。フィチン酸はイノシトールにリン酸が結合することによってできる、リン酸化合物の一種でビタミンBの仲間です。近年、フィチン酸の効果酸化作用などに注目が集まり、サプリメント化された商品も販売されています。一方でフィチン酸にはキレート作用というものがあり、これは、必須ミネラルである亜鉛や鉄分、マグネシウム、カルシウムなどを体外に排出しようとするはたらきです。正確にはキレート作用によって、それらが分解され・・・というプロセスを踏みますが、ここでは体外に排出する機能として覚えておけばOKです。そのような効果から大量に摂取することはあまり推奨されていませんが、1日の摂取量目安としては0.6~3gと言われています。あくまで目安ですが全粒粉で作られたパン100gに含まれるフィチン酸は0.5gと言われており、全粒粉のパンしか食べない・・・という限定的な食生活をしない限りは全粒粉に含まれるフィチン酸によってそれらミネラルの欠乏を招くことはないでしょう。

日本人の食生活を考えた際に、過剰摂取はあまり考えにくく、取りすぎという観点を気にする必要性はあまり高くないように考えられます。全粒粉のデメリットを考えると、むしろ長期保存できないということではないでしょうか?

一般的な小麦粉に比べると全粒粉は長期保存向きではありません。表皮や胚芽が入ることにより酸化がしやすくなり、パンなどに加工したとしても酸化しやすいのは変わりません。酸化してしまうと風味が落ち、見た目も悪くなってしまうため早めに使いきる、加工したものは食べてしまうのが良いでしょう。保存する場合、全粒粉は密閉して涼しいところで常温保存するのがベストですが、虫が湧くのを防ぎたい場合などは冷蔵庫での保存も出来ます。しかし、冷蔵庫での保存だと出し入れした際の温度差で結露し、ダマになってしまったりカビが生えてしまうことがあるため注意が必要です。

全粒粉は一般的な小麦粉では感じられにくい香ばしい風味を感じられることや粒感のある食感を楽しむことが出来るだけでなく、食物繊維やカルシウム、不足しがちなミネラルなどたくさんの栄養分を補ってくれる役割をしています。酸化しやすい点などを気を付けながら普段の生活にバランスよく摂り入れて、全粒粉のおいしさを感じてみてください。