醤油の違いと種類

 お刺し身には溜醤油、九州の醤油は甘い、など日常的に使い分けたり、なんとなく知っていたりする醤油。実は醤油の特徴や区分はJASにより明確に定義されています。今回は醤油の区分と、特徴、合う料理を紹介していきます。

醤油の区分

 日本で作られ流通している醤油は、日本農林規格に関する法律(JAS法)に基づく「しょうゆの日本農林規格」によって分類されています(今回は省略しJASとよぶ)。JASでは、種類、製法、等級の3つの区分をもっており、それぞれに定義が存在しています。定義がなされるだけでなく、等級等の表示はJASによる製造工場の認定を受ける必要があり、認定をされていない工場で生産された醤油にはJASのマークを付けることができません。また、スーパーなどで特選とか特急等の表示が書かれた醤油を見かけることもあるかと思いますが、この表記も認定を受けないと表記が認められません。つまり、特選や特急などの表記のある醤油はJASの認定をうけた醤油なのです。

種類による醤油の区分

 JASによる醤油の区分には白、淡口、濃口、再仕込み、溜りの5つの区分があります。これは原料(種類や割合)と作り方の工程により区分がされます。それぞれの特徴を紹介していきます。

濃口醤油(こいくち)

 日本で生産、流通されている84%は濃口醤油とされており、最も口や目にする機会の多い醤油です。濃口醤油は大豆と小麦を1:1の割合で作られ、熟成期間は短いもので3ヶ月、長いもので2年くらいになりますが、一般的は熟成期間は短くもなく長くもなくちょうど白口醤油、溜醤油の中間くらいとなります。濃口醤油は香りが強く血なま臭さを消し、ほとんどの和食との相性が良い醤油です。醤油の中でも最もスタンダードで広く流通しており、万能選手と呼べる醤油です。

 またJASの分類の中には含まれていませんが、濃口醤油と同じような製法で作られる、甘口醤油というものがあります。甘口醤油は大豆、小麦の他にアミノ酸、甘味料を加えた、その名の通り甘みのある醤油です。甘口醤油は主に九州、北陸で好まれる醤油で、JAS分類には含まれませんが、その地域での食文化を範囲した、地域醤油です。

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淡口醤油(うすくち)

 淡口醤油は濃口醤油に次ぐ生産、流通量のある醤油で日本の流通量の約13%を占めます。関西地方発祥の醤油と言われており、現在でも関西地方で人気の醤油です。淡口醤油は濃口醤油と同じく大豆と小麦を1:1で使用する点では同じですが、熟成期間が濃口醤油よりも短く、色は濃口醤油よりも淡い色をしています。また塩分量は濃口醤油より1割ほど多く、香りは濃口醤油より少なめな点が特徴です。食材の味を活かすことが得意で、お吸い物、炊合せなど、あまり色を濃くしたくない料理や出汁を活かしたい料理との相性が抜群です。

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溜醤油(たまり)

 溜醤油は熟成期間が最も長く、とろみがある液体が特徴的な醤油で、主に中部地方で人気の醤油です。原材料は大豆と小麦ですが、比率は9:1と圧倒的に大豆を多く使用することが溜醤油の特徴です。溜醤油はうまみ成分が他の醤油と比べてもはるかに多く、刺し身や寿司につけたり、照焼きや佃煮などに用いられる醤油です。濃口醤油、薄口醤油に次ぐ3番目の醤油ですあ、上位2種が全体の97%の流通量を占めるため、溜醤油の流通量2%以下とされています。

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再仕込み醤油(さいしこみ)

 再仕込み書油は、濃口醤油と同じく原材料は大豆と小麦を1:1の比率で作りますが、醸造を2回繰り返すことから再仕込み醤油と呼ばれます。2回醸造を行うため原料、製造期間は濃口醤油の2倍となり、コストがかかることからこだわりの醤油メーカーが生産するケースが多く、広く大量の流通する醤油ではありません。

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 しかし、醸造を繰り返すことで濃厚な味わいとなり、濃口より濃く、溜よりはさっぱりとし、さしみや寿司など料理よりもつけたり、かけたりする醤油として使用されます。

白醤油(しろしょうゆ)

 白醤油は、大豆と小麦をおよそ1:9の割合でつくり、熟成期間も5区分の中で最も短い醤油です。見た目も、淡い琥珀色をしており、旨味も抑えられていることから素材を活かす料理との相性がよく、吸い物や茶碗蒸しに利用されます。国内で流通する醤油の中で最も少ない醤油です。

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醤油の種類によってカロリーや塩分濃度も少しずつ異なります。種類ごとに大さじ1、小さじ1の場合の塩分濃度とカロリーをまとめましたのでこちらもご参照ください。

作り方による醤油の区分

 JASでは、製法によって本醸造、混合醸造、混合の3つ区分を設けています。日本の伝統的な醤油の製造方法は本醸造方式で、日本に流通している醤油の8割は本醸造方式で作られているとされています。

本醸造方式

 日本で最も一般的な製造方法です。蒸した大豆と炒った小麦を混ぜ、そこに種麹を加え、麹を作ります。そこに食塩水を加え諸味(もろみ)を作ります。この諸味をかき混ぜながら熟成をさせると、麹菌や酵母、乳酸菌が働いて分解、発酵が進んでいきます。この諸味を絞って出てくる液体を生揚げしょうゆと呼び、生揚げ醤油を加熱したり清澄し、充填し商品化していきます。麹菌が、原料大豆のタンパク質をゆっくりアミノ酸に分解していき、色、味、香りのバランスの良い醤油ができあがります。

混合醸造方式

 本醸造方式と諸味を作るまでの工程は同じ、諸味にアミノ酸液を加えて1ヶ月熟成させる方法です。アミノ酸液特有の旨味を生かした醤油で、九州地方で多く用いられる製造手法です。またアミノ酸液ではなく酵素分解調味液、発酵分解調味液を使用するケースもあります。

混合方式

 混合方式は、本醸造方式で作られた生揚げ醤油にアミノ酸液(または酵素分解調味液、発酵分解調味液)を加え、発酵、熟成をさせない製法です。混合方式は混合醸造方式と同じく甘い醤油を作る時に用いられ、九州地方で好んで使用される手法です。

醤油の作り方についてのより詳しい解説はこちら

等級による醤油の区分

種類等級色度全窒素成分
(g/100ml)
無塩可溶性固形分(g/100ml)直接還元糖(g/100ml)性状
濃口特級18未満
(生醤油は22未満)
1.50以上16以上よく発酵、熟成した醸造こいくちしょうゆの特徴である独特の透明感のある鮮やかな赤橙色を呈し、特有の香りと円熟した塩味及びうまみを有しており、その全てが優良であり、かつ異味異臭及びかびがないこと
上級18未満
(生醤油は22未満)
1.35以上14以上よく発酵、熟成した醸造こいくちしょうゆの特徴である独特の透明感のある鮮やかな赤橙色を呈し、特有の香りと円熟した塩味及びうまみを有しており、その全てが良好であり、かつ異味異臭及びかびがないこと
標準18未満
(生醤油は22未満)
1.20以上こいくちしょうゆ独特の透明感のある鮮やかな赤橙色を呈し、特有の香りと円熟した塩味及びうまみを有しており、その全てが良好であり、かつ異味異臭及びかびがないこと
淡口特級22以上1.15以上14以上よく発酵、熟成した醸造うすくちしょうゆの特徴である独特の黄色みを含んだ淡い赤橙色を呈し、特有の香りと円熟した塩味及びうまみを有しており、その全てが優良であり、かつ、異味異臭及びかびがないこと
上級22以上1.05以上12以上よく発酵、熟成した醸造うすくちしょうゆの特徴である独特の黄色みを含んだ淡い赤橙色を呈し、特有の香りと円熟した塩味及びうまみを有しており、その全てが良好であり、かつ異味異臭及びかびがないこと
標準18以上0.95以上うすくちしょうゆ独特の黄色みを含んだ淡い赤橙色を呈し、特有の香りと円熟した塩味及びうまみを有しており、その全てが良好であり、かつ異味異臭及びかびがないこと
特級22未満1.60以上16以上よく発酵、熟成した醸造たまりしょうゆの特徴である独特の赤褐色を呈し、特有の香りと円熟した塩味及びうまみを有しており、その全てが優良であり、かつ異味異臭及びかびがないこと
上級22未満1.40以上13以上よく発酵、熟成した醸造たまりしょうゆの特徴である独特の赤褐色を呈し、特有の香りと円熟した塩味及びうまみを有しており、その全てが良好であり、かつ異味異臭及びかびがないこと
標準22未満1.20以上たまりしょうゆ独特の赤褐色を呈し、特有の香りと円熟した塩味及びうまみを有しており、その全てが良好であり、かつ異味異臭及びかびがないこと
再仕込み特級18未満1.65以上21以上よく発酵、熟成した醸造さいしこみしょうゆの特徴である独特の赤褐色を呈し、特有の香りと円熟した塩味及びうまみを有しており、その全てが優良であり、かつ異味異臭及びかびがないこと
上級1.50以上18以上よく発酵、熟成した醸造さいしこみしょうゆの特徴である独特の赤褐色を呈し、特有の香りと円熟した塩味及びうまみを有しており、その全てが良好であり、かつ異味異臭及びかびがないこと
標準1.40以上さいしこみしょうゆ独特の赤褐色を呈し、特有の香りと円熟した塩味及びうまみを有しており、その全てが良好であり、かつ異味異臭及びかびがないこと
特級46以上0.4以上
0.80未満
16以上12以上よく発酵、熟成した醸造しろしょうゆの特徴である独特の淡いこはく(琥珀)色を呈し、特有の香りと円熟した塩味及びうまみを有しており、その全てが優良であり、かつ異味異臭及びかびがないこと
上級46以上0.40以上
0.90未満
13以上9以上よく発酵、熟成した醸造しろしょうゆの特徴である独特の淡いこはく(琥珀)色を呈し、特有の香りと円熟した塩味及びうまみを有しており、その全てが良好であり、かつ異味異臭及びかびがないこと
標準46以上0.40以上
0.90未満
10以上6以上しろしょうゆ独特の淡いこはく(琥珀)色を呈し、特有の香りと円熟した塩味及びうまみを有しており、その全てが良好であり、かつ異味異臭及びかびがないこと
JASによる醤油の等級区分

JASでは特級、上級、標準の3つに区分されます。これら3つの区分は旨味の指標とされる「窒素分」の含有量と、色度(しょうゆの色)、無塩可溶性固形分(食塩以外の糖分やアミノ酸など、エキス分と呼ぶこともある)によって定められます。

 特級、上級、標準は最初に説明した、種類による区分ごとに定められており、濃口醤油の特級、溜醤油の上級などの言い方となります。また特級のほうが、窒素分(旨味成分のアミノ酸やグルタミン酸)が増えることから、旨味が強くなり、標準になるとさっぱりとした味わいになっていきます。

 冒頭でも説明しましたが、等級についてはJASの承認を受けなければ特級などの表記はできません。一方で承認を受けても表記するかどうかは任意となるため、承認を受けたうえであえて表記しないケースもあるようです。また、特級については更に超特選と特選という区分があります。これは、等級区分と同じく含まれる窒素分と無塩可溶性固形分(エキス分)によって異なります。

その他の醤油(生醤油、丸大豆醤油、魚醤等)に関する詳しいの解説はこちら

以上、醤油の区分の紹介でした。下記がそのまとめです。

  • 醤油はJASによって種類、製法、等級に分けられる
  • 種類による区分は、主に製造方法と熟成期間によって白口、淡口、濃口、再仕込み、溜の5種類に区分される
  • 濃口、薄口が国内流通量の97%を占める
  • 料理には濃口、薄口、白口が向いており、かける、つけるには再仕込み、溜が向いている
  • 製法による違いは、本醸造方式、混合醸造方式、混合方式の3種で、本醸造方式が全体の8割を占め、九州など甘い醤油が好まれる地域では混合醸造方式、混合方式が使われる
  • 等級はJASによって、特級、上級、標準の3種に区分され、窒素分とエキス分で定義される
  • 特級は更に超特選と特選に区分される